日芸映画祭2026『アメリカとは何だったのか』
12/5(土)~11(金)
映画は、いつもアメリカを映す。
2011年度に始まり、今年で16回目を迎える日芸映画祭。テーマは「アメリカとは何だったのか」。今年になって我々学生も「アメリカはおかしい」と感じる機会が増えている。日本にとってアメリカは戦後80年以上にわたり大きな影響を受け、また頼るべき存在でもあった。いや、世界にとってアメリカは世界一の経済大国であり同時に「世界の警察」とも称され、民主主義の一つの規範として圧倒的な存在感を示してきた。それが1776年7月4日の独立宣言から250年という節目を迎えた今、その姿は思いがけない変化を見せている。
本映画祭は、アメリカとはそもそもどんな国だったのか、そして現在どうなりつつあるのかを日本を含む国際的な視野で見せてくれる作品を集めた。『アメリカの影』(ジョン・カサヴェテス)は1950年代アメリカに潜む人種差別の現実を鋭く突きつける。ほかにも『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』は、巨匠フレデリック・ワイズマンが多様な人々が集うニューヨークの一角を舞台に、異なる言語や文化を抱えながら生きる人々の日常を捉える。こうした作品を通して、理想や繁栄の陰にある矛盾を含め、アメリカの多様な姿を浮かび上がらせる。
今年は、韓国の『地獄花』、そしてアメリカの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』、ワイズマンの『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』、スタンリー・キューブリックの『恐怖と欲望』の4作品で海外の権利元と直接交渉を行った。日芸映画祭は過去に「朝鮮半島と私たち」(2018年)、「中国を知る」(2020年)で外国をテーマにした映画祭を開催してきた。アジアの隣人を映画という窓から見つめてきた私たちが第16回の今年に目を向けたいのは、世界に最大の影響を与えてきた国、アメリカの変容する姿である。本映画祭では、多面的で時に矛盾に満ちたアメリカの姿を、国内外からの視線で見つめ直すことを目指す。我々日本人は、崩壊していくアメリカとこの先どう関わっていけば良いのか。これからの日米関係を視野に入れながら、アメリカが国内外で起こしてきた出来事、重ねてきた崩壊の原因を、南北戦争から現在のアメリカに至るまでを描く映画を通して観客と共に考えたい。
【上映作品】
『火の海』
レジナルド・バーカー/1914年/米/56分(上映は1秒24コマのため38分)/35mm/染色/所蔵:国立映画アーカイブ
大正3(1914)年1月、実際に起きた「桜島の大正大噴火」のニュースに着想を得て制作され、ハリウッドで活躍した日本人俳優の早川雪洲と青木鶴子が主演を務めたサイレント映画。神の呪いを恐れる島民と国境を超えた愛に生きる男女の試練が描かれる。人々の狂乱に応じるかのように火山が猛威を振るい、島は一瞬で熱狂と絶望の渦へと飲み込まれていく。特撮を駆使した大迫力の噴火場面は必見であり、押し寄せる溶岩、パニックに陥る群衆の映像は迫力に満ちている。圧倒的リアリティとサイレント時代ならではの濃密なドラマが胸を打つ。
『蛟龍を描く人』
ウィリアム・ワーシングトン/1919年/米/51分(上映は1秒24コマのため38分)/35mm/染色/所蔵:国立映画アーカイブ
山奥で龍に姿を変えた姫の存在を信じ、龍の絵を描き続ける青年画家・達が、日本画家の娘・梅子との出会いをきっかけに愛と芸術の間で揺れ動きながら成長していく物語。幻想譚と恋愛劇を織り交ぜ、日本美術や自然を詩情豊かに映したサイレント映画の傑作。早川雪洲が主演・製作を務めた。20世紀初頭にアメリカに渡り、ハリウッドで活躍した早川の姿から当時のアメリカと日本の関係について考えたい。
※以上2本は国立映画アーカイブ所蔵で『蛟龍を描く人』は仏語、『火の海』は英語の字幕+日本語字幕版。弁士・音楽付きで上映。
『赤線基地』
谷口千吉/1953年/日本/90分/35mm/モノクロ/配給:東宝
大手映画会社が米軍基地問題を真正面から取り上げ、公開直前には反米的との批判を受けて公開延期となった問題作。占領期の日本を舞台に、中国から10年ぶりに故郷の御殿場へ復員した浩一(三國連太郎)が目にしたのは、米軍基地によって大きく姿を変えた故郷だった。実家に間借りする「パンパン」と呼ばれた米兵相手の売春婦・由岐子(根岸明美)をはじめ、基地とともに生きる人々の日常を冷静な眼差しで映し出し、占領期の日本社会が抱えた現実を丹念に描いた。
『恐怖と欲望』
スタンリー・キューブリック/1953年/アメリカ/70分/デジタル/モノクロ/協力:IVC
『2001年宇宙の旅』(1968)などで映画史に名を刻む巨匠、スタンリー・キューブリックの長編デビュー作。敵地に不時着した兵士たちの極限状態を通して、アメリカの正義の名のもと行われる戦争と暴力の本質を寓話的に見つめる、朝鮮戦争真っ只中の時期の作品。後年、監督自身がその未熟さを理由に封印を望んだことでも知られる幻の作品で、監督の死後、日本では2013年に62分版が公開された。今回は、2023年に見つかった1952年のヴェネツィア国際映画祭で上映された70分完全版を、日本で初めて上映。
『地獄花』
申相玉(シン・サンオク)/1958年/韓国/86分/デジタル/モノクロ
朝鮮戦争後、米軍基地が立ち並ぶソウルを背景にした作品。ヨンシクは仲間と共に米軍倉庫から物資を盗み、闇市で売りさばいて生計を立てていた。そんな彼の前に、米軍を相手にする「洋公主」、ソーニャが現れ、二人は惹かれ合う。しかしソーニャは、田舎から上京したばかりのヨンシクの純朴な弟、ドンシクをも魅了していく。欲望と裏切りが入り乱れる基地村で、兄弟の絆は次第に崩れていく。韓国社会における米軍基地を描く貴重な作品で、戦後韓国の荒廃した現実をフィルム・ノワールの手法で鋭く捉えた巨匠・申相玉の問題作。
『アメリカの影』
ジョン・カサヴェテス/1959年/アメリカ/82分/デジタル/モノクロ/配給:ザジフィルムズ
「アメリカン・ドリーム」と「自由の国」の影に潜む人種差別や若者の孤独を、喧騒と静寂が交錯するニューヨークの夜を舞台に描いた、ジョン・カサヴェテス監督のデビュー作。マンハッタンで暮らす、ヒュー、ベン、レリアの3兄妹は黒人の血を引いており、それぞれ異なる肌の濃さから白人社会での疎外感や葛藤を抱えていた。愛や夢、自立を求める日々の中で、彼らは根強い人種差別や格差に直面していく。即興演出によって映し出される、人種と個性の狭間で揺れる若者たちのありのままの姿は、今もなお観る者の心を激しく揺さぶる。
『シナイ半島監視団』
フレデリック・ワイズマン/1978年/アメリカ/127分/16mm/モノクロ/フィルム提供:コミュニティシネマセンター
ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン監督作品。エジプトとイスラエルの間のシナイ緩衝地帯を舞台に、カメラはそこで監視任務を行うアメリカ軍の小隊を追う。彼らは戦闘部隊でないため、主な仕事は緩衝地帯を往来する車両の監視や記録である。戦争の現場であり
ながら単調な仕事、退屈な日常が過ぎていく。故に、些細な変化が圧倒的な緊張をもたらす。そして仕事の合間には派手なパーティーを開催する。「世界の警察」を自負していた頃のアメリカと中東の関係を見せる貴重な作品。
『黒い雨』
今村昌平/1989年/日本/123分+19分/デジタル/モノクロ/配給:東映
1945年8月6日。原爆による黒い雨を浴び、目に見えない二次被爆の恐怖に怯えながらも、賢明に生きようとする人々を描いた作品。一瞬にして奪われた日常と、その後も続いていく人々の苦しみを描き出す。井伏鱒二の小説を映画化し、第42回カンヌ国際映画祭フランス映画高等技術委員会賞受賞、第13回日本アカデミー賞で最優秀作品賞・監督賞など9部門制覇、「キネマ旬報ベスト・テン」1位、当時は上映されなかった幻の未公開シーン『矢須子の四国巡り』も特別に上映。
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』
ケヴィン・コスナー/1990年/アメリカ/181分/デジタル/カラー/協力:東宝東和
1863年、南北戦争で負傷した北軍中尉ジョン・ダンバー(ケヴィン・コスナー)は、西部のセッジウィック砦へ赴任する。孤独な生活の中、ネイティブアメリカンであるスー族と出会い、言語や文化の違いの壁を越え、彼らから”ダンス・ウィズ・ウルブズ”(狼と踊る男)の名を授かる。しかし、西部開拓を進める白人の侵攻により、ダンバーは大きな決断を迫られる。開拓期のアメリカの真実に迫り、アカデミー賞作品賞を含む7部門を受賞。日本での配給権切れのためドイツの会社と交渉、約6年ぶりの映画館での上映。
『花はどこへ行った』
坂田雅子/2007年/日本/71分/デジタル/カラー/配給:シグロ
フォト・ジャーナリストだったグレッグ・デイビスが肝臓がんで亡くなった。米軍兵士としてベトナム戦争に送られた過去をもつ夫・グレッグの死について、友人から当時浴びた枯葉剤が原因ではないかと示唆された妻の坂田雅子は、夫への追憶と枯葉剤への疑問からベトナムへ行くことを決意する。戦後30年以上を経たベトナムで後遺症に苦しむ人たちの目を背けたくなるような現実を映した坂田の初長編ドキュメンタリー。あの時アメリカが何をしたのか、花はどこへ行ったのか。坂田はその後も『沈黙の春を生きて』など化学物質による環境破壊を追い続ける。
『ひめゆり』
柴田昌平/2006年/日本/130分/デジタル/カラー/共同制作:ひめゆり平和祈念財団/配給:プロダクション・エイシア
太平洋戦争末期の沖縄戦で、看護要員として動員された沖縄師範学校女子部と第一高等女学校の女子生徒からなる「ひめゆり学徒隊」の生存者22名の証言を集めたドキュメンタリー。2007年「キネマ旬報ベスト・テン」文化映画部門1位を受賞。柴田監督は生存者と共に、彼女たちが体験した現地を訪れて取材を行っている。女学生時代の写真や所属していた部活動等の情報が紹介され、各々が当時の状況や心境を詳細に語っている。沖縄戦においてアメリカが及ぼした影響はどのようなものなのか、真に迫った記録が克明に綴られる。
『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』
フレデリック・ワイズマン/2015年/米仏合作/189分/デジタル/カラー/権利元:Zipporah Films/協力:チャイルドフィルム、ムヴィオラ
167もの言語が飛び交う世界有数の多文化コミュニティであるニューヨークのジャクソンハイツ。そこはまさに、アメリカの多様性が凝縮された街である。フレデリック・ワイズマンは、そこで起こる多様な文化や宗教、再開発などの問題にカメラを向け続ける。宗教施設や商店、LGBTQコミュニティなど、多様な場所で9週間の撮影と10ヶ月の編集から生まれたこのドキュメンタリー作品は、現代アメリカの複雑さを浮かび上がらせる。日本での上映権が切れたため、アメリカのジポラ・フィルムズと直接交渉。
『ファースト・カウ』
ケリー・ライカート/2019年/アメリカ/122分/デジタル/配給:東京テアトル
西部開拓時代のオレゴン州。アメリカンドリームを求めて未開の地にやってきた料理人クッキーと中国人移民のキング・ルー。 共に成功を夢見る2人は意気投合し、やがてある大胆な計画を思いつく。それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”であるたった一頭の牛からミルクを盗み、ドーナツで一攫千金を狙うという、甘い甘いビジネスだった。現代アメリカ映画の最も重要な作家と評されるケリー・ライカートが、アメリカ社会の根幹をなす資本主義の始まりを西部開拓時代に映し出す。フランスの『カイエ・デュ・シネマ』誌2021年ベストワン。
『リッチランド』
アイリーン・ルスティック/2024年/アメリカ/93分/デジタル/カラー/配給:ノンデライコ
ワシントン州南部郊外の平和で美しい街リッチランド。長崎に投下された原爆が作られたこの街を現代の人々は愛し、誇りを持って暮らしている。「キノコ雲」のマークは町のいたるところで掲げられ、町の歴史を誇りに思う者がいる一方、多くの人々を殺戮した“原爆”に関与したことに逡巡する者もいる。現代のアメリカ人にとって原爆とは何を意味するのかを素朴に問いかける。日本人にとっては驚愕の事実がここにある。アメリカとは何か、科学の進歩とは何かなど人類の業が浮かび上がる静かなドキュメンタリー。
『イスラエル主義』
エリン・アクセルマン、サム・アイラートセン/2023年/米/84分/デジタル/カラー/配給:アジアンドキュメンタリーズ
現代のイスラエルはなぜ、国際社会からの批判にもかかわらず、独自の強硬な姿勢を貫いているのか。祖国の行いに疑問を抱く若者たちの視点を交え、現代のアメリカとイスラエルの実情をとらえたドキュメンタリー。「バースライト」と呼ばれるイスラエルへの旅行や、ユダヤ人学校での教育を経て、ユダヤ系アメリカ人の子供たちは「ユダヤ人」としての意識を強く持っていた。しかし、パレスチナでの現実を目にした若者たちは、それまで受けてきた教育との相違にショックを受け、やがて自らの意思で行動を始める。
主催:日本大学芸術学部映画学科映像表現・理論コース3年「映画ビジネス」ゼミ、ユーロスペース
上映協力:アジアンドキュメンタリーズ、今村プロダクション、国立映画アーカイブ、キム・ミヨン(申相玉監督記念事業会)、コミュニティシネマセンター、ザジフィルムズ、東京テアトル、東映、東宝、東宝東和、チャイルド・フィルム、ノンデライコ、プロダクション・エイシア、ムヴィオラ、リガード、ccc、Films Sans Frontières、IVC、K5 international、Zipporah Filmas

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予告編
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公式サイト
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公開日
12/5(土)~11(金)
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上映時間
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入場料金
【前売り券】
1回券(一般・学生ともに)¥1,000
3回券 ¥2,400
【当日券】
1回券 一般 ¥1,400/学生・会員・シニア ¥1,200
3回券 ¥3,000 -
前売券情報
【前売り券】
1回券(一般・学生ともに)¥1,000
3回券 ¥2,400
→劇場窓口にて販売中 -
イベント情報
