浪曲映画祭─情念の美学2022

6月24日（金）公開

映画ミーツ浪曲＝「浪曲映画」の再発見

1929年映画は無声からトーキーになったことで、演出の大転換を迫られる。多くの時代劇は人形浄瑠璃や歌舞伎のように、義太夫が節と語りで物語を回す日本の伝統的な演劇形式を踏襲、義太夫に代わる役割を浪曲や琵琶語りに託した映画─浪曲トーキー、琵琶トーキーなるものが登場する。
928年のラジオの全国放送化、ＳＰレコードの本格普及で大ブレイクした、寿々木米若の浪曲「佐渡情話」に目を付けた日活が、浪曲「佐渡情話」（1934年）を映画化して大成功を収める。それを契機に各社は、あたかも今日の映画界がベストセラー小説やマンガを映画化するように、浪曲口演付きや、浪曲・講談演目を脚本とした映画を次々と製作、山中貞雄、成瀬巳喜男、中川信夫、森一生、斎藤寅次郎、三隅研次、加藤泰らも含め、マキノ雅弘の『次郎長三国志』を頂点として、その傾向は浪曲人気が衰える1950年代まで続いた。

浪曲は大衆芸能の王者として終戦後まで君臨するが、浪曲の物語に通底する義理人情、通俗的で情緒的な価値観は、近代的自我を目指した知識人、夏目漱石、芥川龍之介、永井荷風らに忌み嫌われ、文芸の世界では「浪花節」という言葉が否定的なレッテルとして最近まで頻繁に使われていた。しかし従軍画家を務めたことで戦争協力を問い詰められ、フランスから終生帰国することのなかった藤田嗣治が、テープレコーダーに声で残した遺言のなかで、しばしば浪曲の節に乗せて語るほどに、浪曲は日本人に浸み込んでいた。
ラジオによって隆盛を極めた浪曲人気はTVの登場で急速に衰退する。だが浪曲師・国友忠が「二葉百合子、三波春夫、村田英雄という人たちは、浪曲の自在性を生かし、それぞれ見事に独自の節調を作り上げて成功した、現代の浪曲家だ」と書いているように、浪曲は変容しつつも日本人のＤＮＡを受け継いできた。
この特集企画は、いわば私たちのＤＮＡを探り当てる旅でもある。

※上映作品、作品解説、出演者等、詳細はチラシPDFをご覧ください。

主催：ユーロスペース　企画：ユーロスペース+シネマ５企画監修：玉川奈々福　
映画提供：国立映画アーカイブ 東映 KADOKAWA 松竹 東宝 日活協力：国立映画アーカイブ

• 公開日

• 上映時間

  【会場：ユーロライブ】
  
  6月24日(金)　＜生誕111年─森一生映画旅＞
  12:00　『槍おどり五十三次』監督:森一生＋浪曲：玉川太福「権三と助十」曲師:玉川みね子
  14:20　『続・座頭市物語』監督：森一生
  16:40　『大阪町人』監督：森一生＋浪曲：天中軒雲月「天野屋利兵衛」曲師：沢村美舟
  18:45　『不知火検校』監督：森一生＋トーク：山根貞男「森一生映画旅」
  
  6月25日(土)　＜天保六花撰を味わう＞
  11:30　『天保泥絵草紙』監督：山下秀一（活弁付き上映）＋浪曲：木村勝千代「河内山玄関先」曲師：沢村まみ
  13:30　『河内山宗俊』監督:山中貞雄＋浪曲：玉川奈々福「河内山と直侍」曲師：沢村まみ
  16:20　『江戸遊民伝』監督：萩原遼＋対談「天保六花撰のダイゴ味」坂本頼光、玉川奈々福
  19:20　※『番場の忠太郎 瞼の母』監督：稲垣浩、同時上映『石川五右衛門の法事』
  
  6月26日(日)　 ＜忠臣蔵番外篇＞
  11:30　浪曲：真山隼人「徂徠豆腐」曲師：沢村さくら＋『義士始末記』監督：大曾根辰夫
  14:15　『忍法忠臣蔵』監督：長谷川安人
  16:15　『忠臣蔵　暁の陣太鼓』監督：倉橋良介＋浪曲：真山隼人「俵星玄蕃」曲師：沢村さくら
  
  6月27日(月)　＜父もの映画＞
  12:00　『狐のくれた赤ん坊』監督：丸根賛太郎＋浪曲：国本はる乃「忠治関宿落ち」曲師：沢村美舟
  14:20　『嵐』監督：稲垣浩
  16:40　『父子草』監督：丸山誠治
  18:30　『おけさ姉妹』監督：伊賀山正光＋浪曲：玉川太福「男はつらいよ　寅次郎恋歌」曲師：玉川みね子
  
  ※ 6月25日(土)の19:20の回『勢揃い 大江戸六人衆』は、プリント不良につき下記に変更となります(払戻しも可)。ご了承下さい。
  
  変更後:坂本頼光活弁上映
  『番場の忠太郎 瞼の母』1931年 65分
  監督:稲垣浩 主演:片岡千恵蔵
  同活弁上映『石川五右衛門の法事』1930年 20分
  

• 入場料金

  ●映画＋浪曲／活弁士付き上映：一般2400円／学生・会員2000円／高校生1200円
  ●映画のみ：一般1400円／学生・会員1200円／高校生 800円
  
  ※チケットはユーロスペースHP、劇場窓口にて販売中

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